受贈句集一句鑑賞
| 2019年 | 2020年 |

2019年下半期に頂いた句集の中から大西朋による一句鑑賞

齊藤實『百鬼の目玉』
2019年12月31日発行 コールサック社

実石榴を割れば百鬼の目玉あり
石榴の実は口に入れると甘酸っぱい。一粒一粒美しく輝く果実なのに、割ったときに妖しさを感じるのは何故だろうか。不思議でならないこの果実のありように、ようやく答えが見つかった。「百鬼の目玉」だからである。
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水谷由美子『浜辺のクリスマス』
2019年12月25日発行 角川書店

シャワーもていたづら子猫丸洗ひ
子猫の愛らしさが読者に存分に伝わる句。あちこち飛び跳ねてすぐに汚れてしまう子猫。 軽々と掴んでその柔らかな塊を、シャワーで丸洗いする。シャワーを浴びて驚くほど小さくなるが、乾かせばまたふわふわもふもふの子猫に元通り。「丸洗ひ」の措辞が効いている。
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蓬田紀枝子『黒き蝶』
2019年11月16日発行 朔出版

卵焼く立居を小さく春めけり
一生の中で、人は何回何個、卵を焼いたり茹でたりしているのだろう。全ての手順がすっかり身について無駄のない動きをしている作者。同時に自分の存在を小さく感じる年になってきたことを受け止めている作者の姿が見える。
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池上李雨『月白』
2019年11月10日発行 砂子屋書房

山からの大き落葉を庭に掃く
何気ないスケッチのような句だが、そこには山が近くにある生活や朴の木などの大きな木があるのだろうと推察されることが的確に描かれている。さらりとそして大胆に。「大き落葉」を掃く静かな作者の息遣いが感じられる。
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辻󠄀󠄀美奈子『天空の鏡』
2019年11月1日発行 コールサック社

真白くて咲くやうにゐる兎かな
愛らしいものは愛らしく表現したい。しかし凡人には甘くなってしまいがちで、うまく表現できないことが多い。比喩を使った表現は陳腐、類想があっては台無しになることが多い。この句の眼目は「咲くやうにゐる」だ。穢れのない今咲いたばかりの白い花のような兎。今後兎を見ればこの句を思い出すに違いない。
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ローバック恵子『さくらの夜』
2019年10月25日発行 角川書店

ゑのこ草金色はその終のいろ
草々の中でもその姿から印象的なゑのこ草。青々とした時もいいが、枯れが極まった金色の風情は秋の終わりを感じさせる。枯れたものにもある美しさを「金色はその終のいろ」として書家ならではの美意識を感じる。
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乾佐伎『未来一滴』
2019年8月3日発行 コールサック社

ザク切りのキャベツ君に会いたい
キャベツをザクザクと切っていると不意に「君に会いたい」、「君に会いたい」、「君に会いたい」という衝動が。「千切りのキャベツ」ではその衝動は生まれなかったのではないだろうか。ザク切りの包丁の勢いが、その恋の勢いそのままのようである。
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佐々木よし子『すてん晴』
2019年7月20日発行 ふらんす堂

摘んで来し野の花匂ふ良夜かな
日中、散歩のついでに摘んで来た野の花。気取りなくその辺の花瓶にさっと挿す。そういえば今日は良夜である。気が付けばさっと挿した花瓶の野の花が匂っていて、部屋の中にいても外の風情を楽しむことができる。
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ふけとしこ『眠たい羊』
2019年7月7日発行 ふらんす堂

玉虫を追うてゐし目のまだ宙に
吉野の山中で玉虫が何匹も飛ぶところを見たことがある。一瞬で分かる玉虫の美しさ。作者もまた、飛んで何処かへ消えた玉虫に心を奪われてその場を立ち去りがたかったのであろう。眼裏にいつまでも玉虫の輝きが残る。。
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小松生長『鹿鳴越』
2019年6月30日発行 邑書林

触れ合うて苺と苺腐りゆく
何とリアルな句か。苺の粒と粒が触れあって、そこから腐りはじめるという表現は、苺の柔らかな感触をダイレクトに伝え、愛らしい苺を瞬時に官能的なものへと変貌させた。腐りゆく前の真っ赤な苺が生々しい。
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鈴木直充『寸景』
2019年6月10日発行 本阿弥書店

まつさきに石目覚めたる雪間かな
まだ雪の残る中を歩き回って、雪間の中に石を見つけた作者。その石に心を寄せて「まつさきに石目覚めたる」とした。そこには雪の重さや冷たさに耐えて一冬を過ごした石への深い思念が感じられる。
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