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外に出でて夏至といふ日を確かめむ
石田郷子
ふらんす堂通信一一三 なずな集
『外にも出よ触るるばかりに春の月 汀女』を連想させて面白い句。なかなか暮れ切らない夕空を仰ぐ作者の姿が若々しく感じられます。

 
日の力風の力や梅を干す
大峯あきら
平成十九年六月十日 毎日俳壇
梅干は土用の頃が一番よい。夜干しもするが、これは盛夏の風がわたる炎天下の梅干である。

 
ひろびろと机を使ふ夏座敷
山本洋子
晨 平成19年9月号 第141号 雑詠
座敷に机だけが置いてある、という景はよく詠まれるけれども、この場合、机を「ひろびろと机を使う」のである。夏座敷のさえぎるもののない気持ちよさが、「ひろびろと」に現れている。


夏足袋の飛んで跳ねたる神楽かな
山本洋子
晨 平成19年9月号 第141号
神楽舞に、夏足袋の白さが際立って目にとびこんできたのだろう。「飛んで跳ねたる」に躍動感がある。

 
山の芋ありますといふ道しるべ
大峯あきら
平成十九年九月九日 毎日俳壇
秋晴の野みちを歩いていたら、こんな道しるべにでくわした。若い作者らしい率直な表現の力。

 
八朔や背負子の紐の新しく
大峯あきら
平成十九年九月十六日 毎日俳壇
山道で出会った一人の村人の背負子が真っ新であった。一瞬の出会いに見事に「八朔」を捉えた。


家々に牛乳置かれ稲の花
山本洋子
晨 平成19年11月号 第142号
朝はやく、家々の門前に配られる牛乳。おそらく瓶は露に濡れているだろう。そんな朝、爽やかな空気を待ちかねたように稲の花が開くのだ。ごく普通の日常から詩がうまれる一刻である。

 
石段の真中くぼみし冬紅葉
石田郷子
ふらんす堂通信一一九 なずな集
さりげない発見ですが,ただの報告にならなかたのは,俳句らしい表現の力でしょう.冬の紅葉がきいています.

 
涅槃西風関八州の土あかく
野上けいじ
晨 平成21年3月号 第150号 課題詠
もしもしお侍さん.もしや主水さま.こちらを向いておくんなせい.時代劇の見すぎか.関東の土はあかい.


薬罐より酒をつがれて親鸞忌
大峯あきら
平成二十二年一月三日 毎日俳壇
報恩講に参詣して斎の膳についたら、薬罐からいきなり酒をつがれた。田舎の御取越を活写している。

 
馬臭にも慣れて来たりし小春かな
藤山八江
晨 平成22年3月号 第156号 晨集散策
小春日和に誘われての遠出か。大まかに背景だけを叙して、広い牧場に放たれている馬と馬柵を囲む木立、空っぽの厩舎を少し覗きもしてみる様まで、勝手に心を飛ばすことが出来る。「慣れてきたりし」とは巧まざる遠近法の描写。作品世界への誘いの表現である。