梅干す手止めては空を仰ぎけり* 白南風やタアメリツクをまき散らし 八月や真白き句帳前にして
月仰ぎけふの一句となりにけり 観覧車しづかに回る月下かな+ 月白に大道芸人火をつかふ* 新藁であぶりし魚の片身かな 紅玉を甘く煮てゐる午後となり 輪になつて芋むいてをり鍋支度 気に入りし赤き筆入れ秋夕焼 賢治忌や列車の音の遠ざかる 天井の高し廊下に大ばつた 秋の日のステンドグラス透かしたり 開館を待つ人ばかり秋の蝶 天高しティラノザウルス海渡る 足元にこほろぎの居て雨宿+
川なかに青きもの立ち冬うらら+ 美しき掃き目のあとや枯蟷螂 美しき掃き目のあとや神無月+ 梟や三百年の旅籠にて 三人で囲める火鉢雨の音 雨あとや廊下の先の冬紅葉 大きいサンタ小さいサンタ点滅す* 雪晴れやみな美しく見えてをり 息白く大仏さまを見上げをり モンゴルへ帰る人あり冬の月+ 星冴ゆる絶対零度といふ世界+ 臘梅やあおぞらのなほあおぞらに