下駄箱に落葉の匂ひありにけり ゆづりあへぬものもありけりおでん種 綿虫や待ち人は今来たりけり 沼蝦の泥被りつつ冬に入る 水の辺の草まだ青き今朝の冬 翅音なく虫の寄り来る花八手 眦の皺のばしつつ今朝の冬 馬臭にも慣れて来たりし小春かな 水鳥に近くにはとり鳴きにけり カフェテラス重ねし椅子に木の葉雨 蜜柑置き小さき算盤弾きをり 冬の雨すでに暮れたる空の色 ストーブや帳簿の文字の事細か 小さければすぐに溢るる冬の池 枯野来て昼とも夜ともつかぬ雨
白き像諸手をあげし冬の雨 山茶花や大漁旗の褪せし店 ビスケット屑を零して神無月 海草をあつめて浜の焚火かな 鍋焼や窓に当たりし風の音 悴むや道を隔てて海のあり 日捲りの紙のうすさや神無月 冬凪の沖ももいろに晴れてをり 雲厚く張つて来てをりおでんかな 指くいと曲げて熱燗頼みけり 暖房車ものの匂ひの強くなり 猫鳴いて廊下の先の寒さかな うすき翅もつて生まれし冬の虫 触るる実のみな軽かりし小春かな 枯菊や干されし物のみな白く
藁屑や菜屑掃き寄すちやんちやんこ 突き合はす机小さき冬座敷 冬日射す蛹の殻も繭も透け 冬ざるる朴の木高くありにけり しろじろと濡れて生まれし冬きのこ 岩の苔一枚はがす寒さかな もう春かも… 皆の選まだ 葛飾2/10 見失ふ鳥の尾長き二月かな 旧正の沖より雨の降りさうな 潮風の匂はぬ日なり冴返る 腹の色不気味に白し蟾の恋 春の鴨浚渫船を遠く見て